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魚は「味わっている」のか?釣りにおける"味"の科学
目次
はじめに
釣りをしていると、ふと気になる瞬間があります。ルアーを変えたらバイトが連発したり、エサの種類を変えただけで反応がまったく違ったり……。
「もしかして、この魚、味にうるさいのか?」
実はこの疑問、科学的に見ても的外れではありません。魚には、味覚があるのです。そしてその味覚は、人間が思っている以上に繊細で広範囲に分布し、戦略的に働いています。
今回は魚の味覚の正体と、釣りにおける“味”の重要性について解説していきます。
第1章:魚の味覚は「舌」だけじゃない
人間は舌にある「味蕾(みらい)」で味を感じます。甘味、塩味、酸味、苦味、うま味……いわゆる五味です。魚にも味蕾はありますが、その位置は人間とは大きく異なります。
東京大学の魚類生理学研究チームの報告によると、魚の味蕾は次のような場所に存在しています。
- 舌や上あご、喉の奥
- ヒゲ(特にナマズ)
- 体の表面
- 胸ビレや尾ビレの裏側
- エラの内側
つまり魚は、泳ぎながら全身で味を感じているということです。
味覚=視覚や触覚のように環境を認識するセンサーのひとつ
第2章:魚は「うま味」を感じている
魚はうま味を感じているのでしょうか?
アメリカ・ロチェスター大学の研究では、ゼブラフィッシュの味覚受容体がL-グルタミン酸(うま味の成分)に特異的に反応することが明らかになっています。
また、マックス・プランク研究所の研究でも、うま味に反応する神経経路が魚の摂餌行動に関与していると確認されています。
つまり魚は「うま味=栄養がある」と判断し、それを食べるかどうかの基準にしているのです。
魚は“うまそうな波動”だけでも食いつくこともあります
第3章:集魚剤はなぜ効く? 味と記憶の関係
「汁系が強い」と釣りではよく言われます。実際に科学的根拠があります。
カナダ・モントリオール大学の研究では、魚は0.01ppmという微量のアミノ酸でも反応し、摂餌行動を起こすと報告されています。
さらに、オックスフォード大学の研究では、魚は不快な味を記憶し、避けることも確認されています。
フックやプラスチックの「味」も、避けられる原因かも?
第4章:ルアーに「味」はつけられるのか?
ワームは味付きがあるけれど、ハードルアーには味はつけられないのか?
実は、市販されている「うま味スプレー」や「ソルトインジェクション」を使えば可能です。ただし効果は一時的で、持続性は低いのが難点です。
それでも、活性が低い日やスレた魚には効果的なアプローチになるかもしれません。
第5章:魚種による味覚の違い
魚の味覚受容体は、魚種によって大きく異なります。
- 肉食魚(バス、シーバスなど):アミノ酸や魚油に反応
- 草食魚(コイ、ティラピアなど):植物性アミノ酸や糖類に反応
- 回遊魚(マグロ、サバなど):広範囲の味覚センサーを持つ
また、サメは血液中のタンパク質を100万分の1の濃度で感知できるという、驚異的な能力を持っています。
第6章:魚に"味の好み"はあるのか?
魚にも味の好みはあるのでしょうか?
東京大学や京都大学の研究によれば、魚種ごとに好む味が異なり、季節によって味の選好も変わることがあるとされています。
たとえばアユは、春と秋で好む藻の種類が変化するという観察結果もあります。
魚の「旬」は味覚センサーにも影響している可能性が!
結論
魚に味覚はあるのか? 答えは確実に「ある」。
しかもそれは、「楽しむ」ためではなく、生き延びるためのセンサーです。
私たち人間もまた、「味覚」という共通の感覚を持ち、魚とつながっています。
次に魚がルアーをくわえたとき……
彼らは何を「味わって」いるのか――ぜひ、想像してみてください。
今日も、いただきます。ごちそうさまを忘れずに。